第36回 石西礁湖自然再生協議会を開催しました
令和8年3月3日に、第36回石西礁湖自然再生協議会が開催されました。委員74名(44団体・個人)のほか、傍聴者3名、取材2名が参加しました。会議は沖縄県八重山合同庁舎2階大会議室において、オンライン併用のハイブリッド形式で開催されました。
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| 会場の様子 |
1.開会
環境省沖縄奄美自然環境事務所の大林圭司所長(代理:山崎麻里自然再生企画官)、吉田稔会長より開催の挨拶がありました。
2.新規参加委員の承認
個人1名が新たに参加を希望し、出席委員の過半数の賛成により承認されました。
〇個人:徳岡 春美 氏
あわせて、委員名称の変更及び退会について報告がありました。
・八重山ローカルSDGs推進協議会 → やいまDAO合同会社(旧八重山ローカルSDGs推進協議会)
・株式会社星野リゾート西表島ホテル → 西表島ホテルby星野リゾート
・アグロフォレストリーいしがき(組織の解散により退会)
3.議事
石西礁湖自然再生事業環境省事業実施計画(変更)(案)について
環境省沖縄奄美自然環境事務所石垣自然保護官事務所の鈴木規慈上席自然保護官から「石西礁湖自然再生事業環境省事業実施計画(変更)(案)」について説明がありました。
同計画は平成20(2008)年に策定され、令和2(2020)年に変更されており、今回が2回目の変更となります。自然再生の目的として、短期目標、長期目標、長期目標を達成するための目指すサンゴ礁生態系の姿が設定されており、引き続き、国立公園指定当時(1972年)の豊かなサンゴ礁生態系の回復を長期的な目標として取り組みを進めていくことが説明されました。
さらに、サンゴ群集のモニタリングや海洋観測等の継続的な調査を通じてサンゴ礁生態系の変化を把握するとともに、サンゴの有性生殖法により幼生供給拠点を整備し、サンゴ群集修復事業を進めることなど、今後5年間の主な取組内容が示されました。
また、オニヒトデの発生状況の監視や人材育成、陸域からの栄養塩流入など陸域負荷対策との連携、普及啓発の推進、持続可能な社会・ライフスタイルの推進などについても引き続き計画に位置付けられていることが説明されました。
質疑では、陸域負荷対策の記述について、農地や牧草地から流出する栄養塩にもリンや窒素が含まれているためその点を整理すべきとの指摘があり、事務局より修正を検討する旨の説明がありました。さらに、サンゴ群集修復事業における幼生供給拠点整備の内容や、陸域負荷対策に関する関係行政機関への働きかけの方法、ローカルSDGsの考え方などについて意見交換が行われました。
以上の議論を踏まえ、環境省が協議結果に基づき最終的な実施計画(変更)を作成することについて賛成多数で承認されました。
4.報告
(1)環境省自然再生事業の報告
@ 石西礁湖サンゴ群集モニタリング調査
石西礁湖サンゴ群集モニタリング調査の結果について、いであ株式会社沖縄支社の月岡鉄平氏から報告が行われました。調査は石西礁湖の31地点で実施され、水温の推移、サンゴ被度、白化状況、幼生加入量などが確認されました。今年度は顕著な白化は確認されず、サンゴ被度は前年と比べて微増傾向が確認されました。また、地点によっては幼生加入が確認されるなど、回復の兆しも見られたとの報告がありました。
質疑では、委員よりサンゴ被度や白化率、死亡率の算出方法について質問があり、月岡氏より、それぞれ調査群体数や調査面積に基づいて算出している旨の説明がありました。また、資料に算出方法を明記した方が分かりやすいとの意見があり、今後対応を検討するとの回答がありました。
A 石西礁湖サンゴ群集修復事業
石西礁湖サンゴ群集修復事業の進捗について、一般財団法人沖縄県環境科学センターの岡田亘氏から報告がありました。本事業では、サンゴ幼生収集装置を用いた有性生殖法によりサンゴ種苗を生産・育成しサンゴ幼生供給拠点を整備することで、サンゴ群集の回復を促進する取組を進めています。これまでのモニタリングでは、地点によっては着生維持率が比較的高い結果が得られており、設置方法の改良や食害対策、遮光対策などの試験も併せて実施しているとのことでした。今後もモニタリングを継続しながら、効果的な設置条件の検討を進めていく予定ということでした。
質疑では、委員より着床具を覆うネットの目的について質問があり、岡田氏より、大型魚類による破損防止や藻類除去のために用いる貝類の逸出防止を目的として設置しているとの説明がありました。また、ネットを外した場合の食害の可能性について指摘があり、今後のモニタリングで状況を確認していくとの回答がありました。
(2)部会の活動報告
海域・陸域対策部会、普及啓発・適正利用部会、学術調査部会の各部会長から今年度にそれぞれ2回開催された部会の活動報告がありました。
各部会では、委員の取組共有や重点項目の進捗確認が行われ、陸域負荷対策、持続可能な観光利用の推進、サンゴ学習の推進、モニタリングデータの整理と活用などについて議論されました。
@海域・陸域対策部会
第11回及び第12回海域・陸域対策部会はそれぞれ令和7年10月8日及び令和8年1月26日に開催されました。
今年度の部会では、石垣島における農業と環境の両立をテーマとした赤土・栄養塩流出対策に関する取組や、海底堆積物を指標とした陸域負荷評価の研究などについて報告がありました。
また、サンゴ礁のブルーカーボンとしての可能性に関する研究成果についても紹介されました。
さらに、黒島における堆肥活用に関するゆんたく会の開催状況が報告され、琉球大学の専門家と畜産農家との意見交換が行われたことが共有されました。
重点項目1「陸域負荷の低減」の進捗としては、生活排水処理人口割合の増加や堆肥舎整備の進展、堆肥センターにおける堆肥生産量及び利用量の増加などについて関係機関から報告がありました。
また、浄化槽の日や下水道の日に関連した普及啓発イベントの実施状況も紹介されました。
A普及啓発・適正利用部会
第11回及び第12回普及啓発・適正利用部会は、それぞれ令和7年10月1日及び令和8年1月21日に開催されました。
今年度の部会では、行動計画重点項目2「石西礁湖における持続可能な観光利用ガイドラインの作成と活用」及び重点項目3「八重山地域の子どもたちへのサンゴ学習の推進」を主な議題として議論が行われました。
また、沖縄県による観光事業者向け事例集の紹介や、係留ブイ設置に関する協議会についての話題提供がありました。
重点項目3に関連して、八重山地域の学校におけるサンゴ学習の取組が紹介されました。中学校の理科授業の中で使用できるサンゴを題材とした探究学習教材が作成され、生物分類、細胞、生殖・生態などの内容と関連付けた授業が実施されたことが報告されました。
B学術調査部会
第11回及び第12回学術調査部会は、それぞれ令和7年10月7日 及び令和8年1月27日に開催されました。
今年度の部会では、作業チームにおいて石西礁湖で長年継続されているサンゴ礁モニタリング調査データのデータベース化及び公開方法(論文化を含む)について議論が行われたことが報告されました。
また、竹富島のコンドイビーチ周辺で確認されている海水濁度の増加について情報共有が行われ、台風による堆積物の移動や昨年度の大規模白化後のサンゴ融解などが要因として考えられるとの意見が出されました。
さらに、川平石崎マンタポイントの利用ルールの妥当性や、観光利用による影響を踏まえた適正利用の必要性について意見交換が行われました。加えて、保全活動を継続するための資金確保のあり方についても議論がありました。
また、八重山地域の中学校の理科教材として作成予定の「サンゴ学習教材」の内容についても意見交換が行われ、サンゴ礁の基礎知識や石西礁湖の特徴、保全の取組などを分かりやすく伝える構成や写真・図解を活用した理解しやすい教材とすることが望ましいとの意見が示されました。
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| 部会の活動報告の様子 |
(3)持続的海域利用ワーキンググループの活動報告
和泉航平委員より、持続的海域利用ワーキンググループの活動について報告が行われました。本ワーキンググループでは、石垣島及び周辺海域におけるマリンレジャー利用の現状と課題を整理し、持続可能な海域利用に向けたガイドラインの作成を進めています。令和7年度は複数回の会合を開催し、関係者の参加のもと、安全な利用、自然環境への配慮、地域社会への配慮などの観点から課題の抽出と整理を行い、持続可能な海域利用に向けたガイドライン案を取りまとめるに至りました。
また、今後の普及啓発に向け、観光客や事業者に対して分かりやすく情報を伝えるため、動画やイラスト等を活用した周知方法についても検討を進めていく予定です。
(4)委員の取組報告及び話題提供
@ 取組共有シートの紹介
事務局より、委員から提出された取組共有シートの概要が報告されました。22委員より報告があり、研究活動、教育普及活動、地域連携の取組など多様な活動が共有されました。重点項目の進捗把握や新たな連携機会の創出につながることが期待されています。
A 石垣市サンゴ保全庁内連携チームの活動報告
石垣市環境課の長谷川知子氏より、石垣市サンゴ保全庁内連携チームの活動について報告がありました。令和7年度の石垣市の新規採用職員向けの研修や現場視察の実施、関係団体との意見交換が行われるとともに、庁内横断の「シン・サンゴレンジャー」の取組として休耕田を活用したプロジェクトなど、陸域からの負荷軽減につながる施策の検討が進められていることが紹介されました。
B ショートトークセッション
ショートトークセッションでは、石西礁湖周辺で実施されている自然再生や関連分野の取組について、7名の発表者から紹介がありました。
発表者一覧
| 委員名 |
担当者 |
| やいまDAO合同会社(旧八重山ローカルSDGs推進協議会) |
藤本雄一氏 |
| Upside合同会社 |
新田哲也氏 |
| エム・エムブリッジ株式会社 |
佐藤智香氏 |
| 鹿島 基彦 |
鹿島基彦委員 |
| 琉球大学研究推進機構共創拠点運営部門地域共創プロジェクトチーム |
塚原正俊氏 |
| アンパルの自然を守る会 |
藤本治彦氏 |
| 株式会社イノカ |
小薗大臣氏 |
やいまDAO合同会社の藤本氏からは、畜産由来の堆肥を活用した窒素循環型農業の取組が紹介されました。堆肥化技術を活用することで土壌環境の改善や化学肥料の削減につながる可能性について説明がありました。
Upside合同会社の新田氏からは、海洋・水産分野におけるデータ活用の取組として、海洋環境や漁業活動に関する情報をGIS上で可視化するWebツールの開発事例が紹介されました。八重山地域での水温データの共有や漁船航跡データを活用した海底地形の把握などの取組が説明されました。
エム・エムブリッジ株式会社の佐藤氏からは、浮桟橋などの海洋構造物を活用したサンゴの着生・増殖技術の研究について報告がありました。構造物表面でのサンゴの成長や幼生着生の促進に関する取組が紹介されました。
鹿島委員(神戸学院大学)からは、黒潮によるサンゴ幼生の分散に関する研究が紹介されました。鳩間島周辺海域がサンゴ幼生の供給源となる可能性や、今後の観測研究の展望について説明がありました。
琉球大学食資源循環プロジェクトの塚原氏からは、黒島における堆肥化の実践と地域農家との連携による取組が紹介されました。モデル農家での実証や地域勉強会を通じて取組が広がりつつある状況が報告されました。
アンパルの自然を守る会の藤本氏からは、名蔵アンパルを中心とした干潟やマングローブの観察会、小学校と連携した環境教育活動などの取組が紹介されました。
株式会社イノカの小薗氏からは、サンゴの人工繁殖や産卵に関する研究開発の取組や、企業と連携したサンゴ礁保全活動、環境教育イベントの実施などについて紹介がありました。
これらの発表を通じて、石西礁湖の自然再生に関わる多様な研究や取組について情報共有が行われました。今後の連携や協力への発展が期待されます。
5.グループディスカッション
参加者は3つのテーマに分かれてグループディスカッションを行い、石西礁湖のサンゴ礁に関する取組の今後の可能性について活発な意見交換を行いました。
@テーマ1【陸域対策】 石垣島での堆肥利用を進めよう!
(テーブルリーダー:【現地+オンライン合同】琉球大学食資源循環プロジェクト・塚原正俊氏)
石垣島で堆肥化を進めるための課題や取組の方向性について意見交換が行われました。議論の中では、堆肥化の取組を進める上で資金の確保が大きな課題であるとの意見が多く出されました。資金確保の方法として、ふるさと納税や企業版ふるさと納税の活用のほか、NFTの活用やネーミングライツの導入といったアイデアも挙げられました。
また、農家の経営状況が厳しい中で、堆肥化にかかる費用を農家だけで負担することは難しいため、周囲からの支援が必要ではないかとの意見も出されました。さらに、県や市などの行政機関との連携を強化しながら取組を進めていくことの重要性についても共有されました。
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| 現地+オンライン合同グループセッションの様子 |
Aテーマ2【適正利用】 海域利用ガイドラインをどうやって広める?
(テーブルリーダー:【現地】和泉航平委員、【オンライン】大堀健司委員)
現地グループでは、まず地元事業者への周知を進めるため、石垣市のLINEなどを活用し、ガイドラインの取組を繰り返し発信していくことが重要ではないかとの意見が出されました。また、観光客向けの情報発信として、空港での広告やディスプレイの活用なども提案されました。一方で、こうした取組には費用がかかるため、八重山をよく訪れる人や環境意識の高い人を対象にクラウドファンディングで資金を集め、情報発信に活用する可能性についても意見が出されました。さらに、ルールを守る事業者にインセンティブが生まれるような認証制度を設けることで、ガイドラインの普及につながるのではないかとの提案もありました。加えて、条例などを通じて市としても取組を後押しすることで、まずはガイドラインの存在を広く知ってもらうことが重要ではないかとの意見が出されました。
オンラインのグループでは、ガイドラインを実際に守っていくためには、事業者同士が連携し、団体として取組を進めていくことが重要ではないかとの意見が出されました。また、観光客への周知については、SNSやステッカーなどさまざまな手法が提案されました。さらに、環境教育イベントなどを通じて環境意識の高い層にガイドラインやそれを守る事業者の取組を伝えることで、旅行時にそのような事業者を選んでもらうことにつながるのではないかとの意見も共有されました。
Bテーマ3【普及啓発】 小中学校以外の年代にどんな普及啓発ができるか?
(テーブルリーダー:【現地】わくわくサンゴ石垣島・大堀則子氏【オンライン】沖縄県環境科学センター・三部碧氏)
現地グループでは、サンゴに関する学習や普及啓発をどのように広げていくかについて意見交換が行われました。対象としては観光客だけでなく、より幅広い層に知ってもらうことが重要であるとの意見があり、インバウンド向けの取組やホテルスタッフ向けの研修、ママフェスなどのイベントを通じて子育て世代にアプローチするアイデアなどが出されました。また、ホテルでの学習プログラムや体験型アクティビティ、サマーキャンプなど観光と結び付けた取組のほか、イリオモテヤマネコのキャラクターと連携した普及啓発などのアイデアも挙げられました。情報発信の方法としては、SNSやYouTubeなどの活用、映像コンテンツの発信、アンケートへの記念品付与による参加促進のほか、石垣市のLINEやウェブサイトの活用などが提案されました。また、空港や離島ターミナルなど、待ち時間に情報を見てもらえる場所での発信についても意見が出されました。
オンラインのグループでは、県外の人々に対する普及啓発の方法について議論が行われました。県外ではサンゴが身近な存在ではないため、サンゴそのものから入るのではなく、気候変動による身近な自然環境の変化などを入口としてサンゴの問題につなげていくアプローチも有効ではないかとの意見が出されました。また、サンゴの美しい映像を活用したドキュメンタリーなどのコンテンツの可能性や、水中環境の3Dデータを活用したゲーム感覚の学習コンテンツなど、新しい技術を活用した普及啓発のアイデアについても意見が共有されました。
多様な分野の参加者がそれぞれの立場から意見交換を行うことができる貴重な機会となりました。会場では終始活発な議論が交わされ、各テーマについて多様な視点から多くの意見やアイデアが出されるなど、盛り上がりのある雰囲気の中で議論が進められました。また、従来はオンライン参加者と会場参加者を分けてセッションを行っていましたが、今回は新たな試みとして一部のグループでオンラインと現地の参加者を合同としたディスカッションが行われました。
6.閉会
中村崇副会長から第36回石西礁湖自然再生協議会の総括と閉会の挨拶がありました。
配布資料
資料5-1石西礁湖サンゴ群集モニタリング調査結果速報の付録
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