第31回 石西礁湖自然再生協議会を開催しました
2023年3月16日(木)に大浜公民館において、「第31回石西礁湖自然再生協議会」が開催され、35団体の個人・法人・行政の団体委員・傍聴者の方(対面にて19名)が出席しました。また、今回は対面とオンラインのハイブリッド形式で実施しました。
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石西礁湖自然再生協議会の様子 |
<報告>
各部会長と事務局と委員から以下の3つの報告がありました。
(1)各協議会委員の取組、各部会の開催報告
まず各部会長より、2023年1月30日、2月6日に開催された3部会について概要の報告がありました。
普及啓発・適正利用部会の大堀部会長(エコツアーふくみみ)より、石西礁湖の飾り文字についてコンテストの開催を検討したことについて報告がありました。これは、第30回協議会の意見交換の中で、石西礁湖の認知度が低いという意見があったためです。コンテスト開催上の具体的な募集期間や場所、賞金について、メーリングリスト等を活用して方針を固めていきます。
次いで学術調査部会の中村崇部会長(琉球大学)より、2022年に起こった大規模な白化現象に関する報告と、「陸域負荷軽減策の提案」、「サンゴへのリン酸の影響の低減に向けたリンの島内循環共創クラスターの構築」について報告がありました。その他、今後白化したサンゴに対して生き残る確率を上げるための方策に加えて、定着版の代替素材の選定と、そのための実地調査について報告がありました。
海域陸域対策部会の吉田部会長(八重山サンゴ礁保全協議会)からは、一人一人が行動し皆で守る体制を構築するための資金面からのアプローチについて議論しました。また、具体的に行いたい「守る」ための対策として、SNSの活用を来年度以降検討することとしました。さらに、「沈砂池と海の汚れについて」話題提供があり、今後部会でも問題として取り組むことを検討していきます。
(2)環境省事業の実施状況について
環境省石垣自然保護官事務所の大嶽自然保護官より、「石西礁湖自然再生事業環境省事業実施計画」に基づき、モニタリング調査、サンゴ群集修復事業、オニヒトデの駆除および分布監視、陸域負荷対策のための連携強化、持続的な利用に関する対策および意識の向上・広報啓発等の事業について報告がありました。
次に、2022年のサンゴ群集モニタリング調査の結果速報について、石森委員(いであ株式会社)より報告がありました。スポットチェック調査及びコドラート調査により2022年度は白化により被度が低下したことが報告されました。さらに、定着量調査でも定着量は低調という結果になりましたが、1年生稚サンゴ加入量調査ではミドリイシ属の加入量は良好という結果になりました。
最後に、岡田委員(沖縄環境科学センター)により、令和3年度4月より実施しているサンゴ群集修復事業についての報告がありました。大規模攪乱が発生してもサンゴの回復力が著しく低下しない状態にすることを目標に、幼生供給試験、攪乱要因対策試験、藻類除去試験の3つを中心に行っています。今後、1年後に予定している稚サンゴ加入数のモニタリング結果より、「幼生放流」および「藻類除去」それぞれの効果が1歳齢稚サンゴの新規加入にどれだけ寄与しているかを検証していくとのことです。
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大嶽自然保護官(環境省石垣自然保護官事務所)による報告 |
(3)令和4年度自然再生協議会全国会議について
環境省自然環境局自然環境計画課の花田事業係長より、2023年1月24日に開催された「自然再生全国会議石西礁湖大会」について報告がありました。今回の全国会議は石西礁湖自然再生協議会が受入れ協議会でした。石西礁湖自然再生協議会委員による活動紹介や発表として、サンゴ種苗育成解説(水槽・動画)等を行いました。
<議題>
事務局から1つの報告と委員から1つの提案がありました。
(1)「石西礁湖自然再生全体構想 行動計画2019-2023」見直し方法について
環境省沖縄奄美自然環境事務所の鈴木祥之国立公園保護管理企画官より、「石西礁湖自然再生全体構想 行動計画2019-2023」見直し方法について報告がありました。今まで、2007年の「石西礁湖自然再生全体構想」がまとめられた後、2017年に「石西礁湖自然再生全体構想 行動計画2019-2023」が策定されました。今後は2023年度に見直しを行い、行動計画のふり返りと評価を部会・協議会を通じて共有するとともに、2024年度からの新しい行動計画策定に向けて修正・追加・変更等を行うとのことです。
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鈴木祥之国立公園保護管理企画官(環境省沖縄奄美自然環境事務所)による報告 |
(2)委員による新規ワーキンググループ設立の提案について
安元純委員(琉球大学)より、これまでの学術調査部会等における内容を踏まえて、蓄積型栄養塩に関するワーキンググループ(名称未決定)の設立について提案がありました。本ワーキンググループでは、より効果的に石西礁湖全体の栄養塩分布状況を推定する調査計画や、地下水を含む栄養塩供給メカニズムを把握するためのモデル作成を予定しており、北里大学安元剛委員、琉球大学安元純委員、中村崇委員、東京工業大学中村隆志委員が主体となって活動する予定です。
本ワーキンググループの設立については、委員の多数決によって承認されました。
<委員の取組発表>
委員から5つの取組について紹介がありました。
(1)沖縄気象台からのお知らせ
まず、吉村委員(気象庁沖縄気象台)より、沖縄気象台の新たな組織として、2023年度から地域防災推進課と防災調整官を新設することと、2023年度から気象庁「海洋の健康診断表」の一部が以下のとおりリニューアルすることが報告されました。
・「沖縄海域の海面水温情報」のURL変更 (2023年3月15日公開)
https://www.data.jma.go.jp/kaiyou/data/db/kaikyo/series/engan/engan_OK.html
・「沖縄周辺海域の診断表、データ」
https://www.data.jma.go.jp/kaiyou/data/db/OK/dbindex_OK.html
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吉村委員(気象庁沖縄気象台)による報告 |
(2)沿岸生態系の気候変動適応マニュアルの策定について
環境省沖縄奄美自然環境事務所の鈴木祥之国立公園保護管理企画官より、環境省が「沿岸生態系の気候変動適応マニュアル」を策定したことについて報告がありました。これは、国、地方公共団体や地域の活動団体等が地域の「適応」を主体的に継続的に進めるための具体的な手法や連携体制を示すものとなっており、今回は適応の進め方や方針の考え方について報告がありました。
(3)サンゴ礁から学び「100年後に残す」ことを目指した将来の人材と地域の創造
鈴木倫太郎委員(喜界島サンゴ礁科学研究所)より、本研究所のサンゴ礁を通じた活動が、SDGsを体現する取組を表彰する「環境省グッドライフアワード」で10周年特別賞 ロングライフ賞を受賞したことを機に、具体的な取組みについて報告がありました。報告の中では、本研究所の概要や、島のサンゴ礁をまもる活動等、環境教育をはじめとした多くの取組みについて発表がありました。
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鈴木倫太郎委員(喜界島サンゴ礁科学研究所)による報告 |
(4)沖縄県のオニヒトデ対策について
大城委員(沖縄県環境部自然保護課)より、石西礁湖の行動計画にも位置付けられている沖縄県のオニヒトデ対策について、これまでの実施状況と成果、課題について報告がありました報告がありました。令和3年度までの成果として、ある程度の規模の大量発生を予察できる技術の開発や、地域でも実行可能な予察手法の普及について報告がありました。 また、現在実施しているオニヒトデ対策(令和4年度〜令和8年度)として、稚ヒトデモニタリングやオニヒトデ発生状況の調査・検証、大量発生を分析、評価するためのスキームの構築等を実施していることについて発表がありました。
(5)モニタリングサイト1000サンゴ礁調査速報
環境省生物多様性センターの中村仁保全科長により、「モニタリングサイト1000サンゴ礁調査」のうち、石垣島周辺海域や石西礁湖及び西表島周辺海域における、2022年度の調査結果について報告がありました。そのうち、石西礁湖は2021年に引き続き夏の高水温による白化が発生し、全地点で白化が確認されていました。また、白化率及び死亡率は昨年に比べて大幅に高く、平均被度の減少には至らなかったものの、多くの地点で被度が減少しており、大きな影響があったことが報告されました。
<意見交換 テーマ 「『石西礁湖』をどう伝えるか」>
対面出席者の2グループ、WEB参加者のグループに分かれ、普及啓発・適正利用部会の中で検討した「石西礁湖飾り文字コンテスト」で、決定した飾り文字をどんな場面で活用するのが効果的かを議題として、グループディスカッションが行われました。主な意見と具体策は以下のとおりとなりました。
グループディスカッションの主な意見と具体策 |
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今回挙げられた意見は普及啓発・適正利用部会や次回協議会にフィードバックしていきます。今後も定期的にグループディスカッションを実施し、交流を深めていきます。
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対面参加者各班からの発表 |
<その他>
事務局より、来年度の石西礁湖自然再生協議会のスケジュール予定が説明されました。来年度のスケジュールとして、3部会と協議会を2回ずつ開催する案内がありました。
最後に、石西礁湖サンゴ礁基金の宮本委員から八重山うみしまフレンドシップの「交流の集い」が3月24日に開催されることについて連絡がありました。
配布資料
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