再生事業とは...過去に失われた自然環境を取り戻すための事業

 再生事業(自然再生事業)とは、「自然再生」を目的として行う事業のことです。「自然再生」とは自然再生推進法第2条では下記のように定義されています。
「過去に損なわれた自然環境を取り戻すことを目的として、関係行政機関、関係地方公共団体、地域住民、NPO、専門家等の地域の多様な主体が参加して、河川、湿原、干潟、藻場、里山、里地、森林その他の自然環境を保全し、再生し、若しくは創出し、またはその状態を維持管理すること。」
つまり、これまで自然に対して行っていた破壊や収奪といった一方的な関わり方を転換し、自然に対し人間の側からも再生や修復といった「貢献」を行うことで、生態系の健全性を回復し、ヒトと自然の共生を図る事業と言えます。

 なぜ自然再生を行うのか...ヒトから自然への貢献

 現在地球温暖化問題をはじめとして、様々な環境問題が浮上しています。その昔、我々人類も他の様々な生物と同様に、複雑なバランスを持つ地球環境という"環(わ)"の中で共生してきました。しかし近年、文明の発達とともに森林を伐採し、水環境を汚染し、化石燃料を燃やし大気を汚染する等、人類の活動が地球環境に与える影響は次第に大きくなっています。逆に人類の自然への働きかけが少なくなったことによる影響も同様に大きくなっています。

 一方、自然には浄化能力、再生産能力があります。森林によるCO2の吸収や、微生物の働きによる汚染物質の分解等様々です。いつ頃まで、自然が人類の活動を受け入れることができていたかはわかりませんが、現在は既にその限界を超えており、環境汚染、資源の枯渇、生物種の絶滅等、自然環境が危機的状況に陥っていることは明らかです。冒頭に述べた地球温暖化に代表されるように、その危機的状況に警鐘を鳴らす出来事が多数確認されるようになりました。

 人類は既に、共生という"環"の外にいます。人類の活動により地球生態系の"環"の一部を損なうと、どのような波及的影響が生ずるか予想しがたいところです。このままでは、人類及び地球上に住む全ての生物が将来にわたり地球上で生存していくことができなくなるかもしれません。

 自然の浄化、再生能力だけでは、この危機的状況を回復させることはできません。私たちは、離れてしまった共生の"環"との距離を縮め、人間を含む地球上に生きる全ての生物と末永く共生していけるように努力する責務があります。

 次は、人間が自然に対し貢献する番です。

 温暖化対策や、リサイクルの促進、省エネルギー開発等、人間が自然に対し貢献できることは様々です。もちろん自然再生もそんな貢献の1つと言えます。

 もうひとつの意味...自然があることが自然ではなくなった

 目を閉じて子どもの頃の風景を思い出してみてください。どんな風景が思い出されましたか?ある程度以上の年齢の方なら、虫取りをした原っぱや雑木林、魚やザリガニをとった池、田んぼから聞こえる蛙の鳴き声や秋の虫の涼しげな音色が聞こえてくる風景等、自然風景を思い出されたのではないでしょうか?逆に現代の子どもたちはどうでしょう。もちろん住んでいる環境によって異なると思いますが、都市部の子どもであればある程、思い出す風景は自然が少ないものになっていっていると思います。

 「原風景」という言葉があります。皆さんが思い出された風景が「原風景」です。幼いころになじんだ自然の風物・風景は、老齢に至るまで人の心の拠り所になると言われています。世代間で「原風景が異なる」ということは、ここ数十年の間に身近にあった自然の多くが消滅したことを意味します。これまで、「自然」という共通の舞台の上で継承されてきた文化も、その舞台を失ってきたことにより継承が困難になりつつあります。もはや、若い世代で、和歌や俳句に読み込まれた自然に対する気持ちを読み取るのことができる人は少なくなってきています。

 「自然」の喪失は、世代、時代を超えた絆の喪失にもつながります。キレ易い子ども、それを正すことができない大人、世代間に生まれた隔たりはその表れかもしれません。

 自然再生のもう1つの意味は、自然の「原風景」の回復でもあります。

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